■『疋田駅』と『新疋田駅』
ここで紹介する『疋田(ひきた)駅』ですが、本稿作成時点において存在していません。なぜ存在していないのか、本題に先立ち軽く触れておきます。
“日本遺産”のページで紹介してますが、旧柳ケ瀬線上にあった『疋田駅』は北陸線の新線切替により1963年に廃止されました。一方で新線の方には、別の駅として1957年に『新疋田駅』が設けられています。
『新疋田駅』については下でレポートしていますが、地域の駅として今も役割を果たしています。
ところで、廃止された旧柳ケ瀬線がどこを通り、疋田駅はどこにあったのでしょうか。
今回現地で確認を行うにあたり、事前に駅が現役だった当時と現在の航空写真を見比べることにしました。
写真を見ると、長浜側からやってきた線路は、カーブを描きながら集落そばにあった疋田駅へたどり着いたようです。駅のあった場所は、今はすっかり宅地に囲まれているようです。
今の駅跡は。どのような感じになっているのでしょうか。現地では線路跡を歩き、駅の場所を目指したいと思います。
■新疋田駅
現地へは大津市より湖西経由で向かい、現地へ向かう前に『新疋田駅』へ立ち寄りました。
カーナビ見ながら新疋田駅にたどり着くと、そこには『愛発(あらち)』と書かれた看板の駅舎が…左下に新疋田駅と記した看板があるのですが、最初は駅名変わったっけと頭に「?」が浮かびました(笑)。
『愛発』は、新疋田駅周辺に1955年まで存在した村の名前です。奈良時代には
愛発関という関所が置かれましたが、場所は明らかになっていないそうです。
駅舎は入口からホームへの出口が見通せるシンプルな構造で、様々な方による鉄道写真が飾られた“鉄道ギャラリー”コーナーが駅舎内に設けられています。
ホームにお邪魔します。
線路の南側(近江塩津駅側)には、県境を越える約5.2kmの深坂トンネルが口を開いてます。反対の北側(敦賀駅側)から来る列車は、途中にある衣掛(鳩原)ループで高度を稼ぎます。
特急は停車しませんが2面3線という駅の構造もあり、山中の駅にしてはそれなりの規模のように感じます。
短いですが新疋田駅のレポートは以上として、目的地である疋田を目指します。
■笙の川渡河前後
疋田では、『笙の川(しょうのがわ)』近くの路肩に車を停めました。曽々木隧道を抜けた柳ケ瀬線の列車が、疋田駅到着前にこの川を渡っています。
橋は残っていませんが橋脚台など残っており、川岸に立ちつつ、橋が在りし頃の姿を思い描きました。
マップ…笙の川周辺
航空写真にて、笙の川周辺の廃線跡想定ルートを確認します。両岸(A)(B)より観察しますが橋は撤去済みのため、往来には国道8号の旧道を使いました。
マップ(A)地点
疋田駅手前で笙の川が横切り、対岸を国道161号が通ります。柳ケ瀬線は国道8号(旧道)と共に渡河しましたが、現在その橋は存在していません。
マップ(B)地点
集落側の国道161号より、(A)方向を観察します。対岸には橋台が、川中には橋脚台が残っています。それらより、当時の橋の姿を思い浮かべます。
マップ(C)地点
川岸から国道161号を渡り、地区の集落側から橋があった方向を見ています。手前右側の小道が廃線跡と思われ、画像のように路線があったのでしょう。
ここからは予定通り、柳ケ瀬線跡と重なる小道に沿って疋田駅跡を目指します。この道は執筆時にStreet View掲載がなく、初めて見ることになる風景に期待が高まります。
■疋田駅の跡へ
柳ケ瀬線跡を進んだ先に、今回の目的地である疋田駅跡がありました。
マップ…旧疋田駅跡まで
廃線跡と思われる小道を、途中の建物のある区間を迂回しつつ散策します。小道に入り間もない(D)地点と、駅跡となる(E)地点で観察を行います。
マップ(D)地点
旧疋田駅側を向いていて、左側が小道に入ってすぐ、右側が先に進んだもの。黒ラインが路線想像ですが、進行方向に建物があるため迂回しています。
マップ(E)地点 旧疋田駅跡1
建物2軒分迂回した先に、『ひきた』駅標とともに石積みホームの遺構が待っていました。途切れていた路線跡が、ここから復活することになります。
マップ(E)地点 旧疋田駅跡2
駅標はもちろん当時のものではないですが、裏側に疋田駅跡の説明があるので目を通しておきましょう。隣には日本遺産の説明看板も立ってます。
ということで、今昔の航空写真より想定した疋田地区内の場所にて、大事に残されている疋田駅跡を確認をすることができました。
『ふらろぐ』では、日本遺産の説明看板に掲載されていた、当時の疋田駅の写真を転載いたしました。写真を見ながら、当時はこんな風景だったのだなと改めて思いを馳せます。
■未来への妄想
冒頭の“廃止された旧柳ケ瀬線がどこを通り、疋田駅はどこにあったのか”が判明し満足できましたので、現地より撤収することにします。
辿ってきた柳ケ瀬線跡と疋田駅跡に別れを告げ、並走する国道8号へ向かいます。
“疋田検問所”という小さな交差点で国道に合流し、車を停めている駐車帯まで国道に沿って歩きます。

国道の途中にバス停があり、今はバスが鉄道に代わる疋田地区の足となっています。
バス停には『銀河鉄道999』のキャラクターが描かれ、将来はここから宇宙へ鉄道が…なんて妄想が加速します。
敦賀市では敦賀港開港100周年の記念として、『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』の
ブロンズ像が市街地に設置されていることもあり、昔と未来の鉄道を感じられそうです。日を改めて、市街地も訪れたいと思います。